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[2018/12/11]ベンチャーファイナンス 企業再編の税制

「企業再編」とは、企業の組織を再編し、経営を合理化しようとする一連の手続きのことです。「組織再編」とも呼ばれます。事業の譲渡合併、会社分割、株式交換株式移転などが含まれます。
 
一方、「M&A」も、合併や株式譲渡などの手続きを利用した、企業再編の一形態であると言われています。
M&Aとは、「企業や事業の経営権を移転させる」ことであり、合併や株式譲渡、事業譲渡などの手法があります。
では、企業再編をする際の税金はどうなるのでしょうか。以下では、企業再編の一例として、「株式譲渡」の場合についてみていきます。また、「組織再編税制」の概要について、みてきましょう。
 
1.株式譲渡の場合
 
企業再編には、様々な手法があります。ベンチャー企業やスタートアップ企業で行われるM&Aの多くは、「株式譲渡」、「事業譲渡」、「第三者割当増資」などになりますが、M&Aの手法によって誰が税金を納めるのかが異なってきます。以下では、「株式譲渡」が行われる際の税金について、みていきます。
 
株式譲渡とは、株式を相手方に譲渡することで経営権を譲渡する方法のことです。売り手側にかかる税金は、売り手側が「個人」か「法人」かによって、「所得税」と「法人税」というように、税金の種類が異なってきます。
 
【売り手側の株主が個人の場合】
売り手側が個人であれば、「譲渡益」に対して約20%の譲渡所得税等がかかります。譲渡益の計算方法は、以下の通りです。
・譲渡代金-株式取得費用等 = 譲渡所得
・譲渡所得×約20%=税金
 
株式取得費用等には、株式取得費用、譲渡経費などが含まれます。なお、税率には、復興特別所得税が加算されます。
 
【売り手側の株主が法人の場合】
法人の場合、「譲渡益」を計上した場合には、他の益金と同様に益金算入され、法人の「課税所得」に含まれることになります。「課税所得」とは、法人税法における「利益」のことです。日本の法人は、「課税所得」に対して、実効税率約30%の法人税等がかかります。なお、譲渡経費については、損金算入することが可能になります。
 
【買い手側】
基本的に、税金はかかりません。
また、株式譲渡によって買収した場合、基本的に、買収にかかった金額を経費処理することはできませんので、注意が必要です。
 
2.売り手側のメリット・デメリット
 
株式譲渡によるM&Aの場合における、売り手側のメリット・デメリットについて、それぞれみていきましょう。
 
メリットは、M&Aの手続がシンプルなため、スピーディーに行えることが最大のメリットになるでしょう。また、売り手側が個人の場合、譲渡益に対する税率が低いということもメリットになります。これは、個人が給与で得た所得の場合、給与所得として税率5%~45%の累進課税で計算されます。一方、株式譲渡で得た所得にかかる税率は、約20%となるため、高額になればなるほど、有利になり、これがメリットであると言えます。
 
一方、デメリットとしては、株式譲渡は株式を完全に手放す方法であるため、株式を完全に手放したくない、経営権や支配権を維持したい場合などには、不向きな方法であると言えます。また、他のM&Aの手法を使った場合には課税されない場合もあるので、「課税される」ということ自体がデメリットとなる場合もあるでしょう。
 
3.買い手側のメリット・デメリット
 
一方、買い手側のメリットは何でしょうか。株式譲渡の場合、買い手側には税金はかかりません。株式譲渡によるM&Aは、会社を丸ごと買収するという行為のため、会社が有する資産・契約等をそのまま引き継ぐことができる、というメリットがあります。
 
一方、デメリットとしては、逆に、不要な資産、簿外債務等があった場合でも引き継がなければならないということがあるでしょう。また、株式譲渡は金銭などで買収する行為であるため、場合によっては、買収資金の準備が必要であるということが最大のデメリットであると言えます。
 
4.組織再編税制
 
次に、株式譲渡以外の企業再編の税制については、どうなっているのでしょうか。「合併・会社分割・現物出資・事後設立・株式交換・株式移転」という企業の再編行為が行われた場合の課税ルールを定めたものを「組織再編税制」といいます。これは、これまでM&Aの手法によりばらばらであった税制が一本化されたものです。
 
法人税法においては、法人が有する資産を移転した場合、「時価による譲渡」があったとみなして、「譲渡損益」を認識するのが原則です。ただし、資産を移転する相手が株主であった場合、原則は、「配当」となります。
 
配当を受取った株主が法人である場合、法人税法では、受取配当金は「益金不算入」となりますが、個人の株主については、配当金に所得税が適用されるため、税金の負担が違ってしまいます。また、同じグループ内で企業再編をする場合、グループ全体では変化がないにも関わらず、個々の会社単位で法人税を課税すると、多額の税金が課税されてしまうという不合理が生じることが考えられます。
 
これらの問題に対して、組織再編により資産を移転する前後でグループ全体で特に変更がないと考えられる場合には、それまでの課税関係を継続させることが適当とみなされるため、組織再編の一定の要件を満たす場合に限り、資産移転の譲渡損益を繰り延べることができることになりました。
 
課税繰り延べが認められる組織再編成を「適格組織再編」といい、繰り延べが認めらないものを「非適格組織再編」といいます。これが組織再編税制の基本的な考え方です。つまり、組織再編を行う場合、「税制適格」の要件を満たすかどうか、ということがポイントになります。
 
5.税制適格
 
それでは、「税制適格」の要件とは、何でしょうか。組織再編税制における税制適格となる再編の種類には、大きく以下の3つがあります。
 
・100%支配関係のある企業グループ内での再編
・50%超支配関係のある企業グループ内での再編
・共同事業を行うグループ外企業との再編
 
この3つの種類に応じて、それぞれ税制適格の要件が異なります。例えば、3つの再編に共通する要件は、「金銭などの支払がない」ことが挙げられます。
 
以上、組織再編税制の概要についてみてきました。M&Aを行う際には、税制の面についてもよく検討して決めることが重要になってくるでしょう。